多くの会社では、基本給のほか、各種手当を支給しています。その手当を社会保険上の「報酬」又は「賞与」又は「報酬にも賞与にも該当しない」と判断して各種手続をしているかと思います。その判断、誤っていないでしょうか。
社会保険料の対象とすべき手当なのに対象としていなかった場合、年金事務所の調査で指摘されて遡及して社会保険料を支払うことになります。社会保険料は従業員負担分と会社負担分をまとめて会社が納めます。遡及して社会保険料を支払う際、退職している従業員がいたら、その従業員が負担すべき社会保険料はどうしますか。退職している従業員がいなくとも、過去の社会保険料を従業員から徴収することで、従業員が会社に不信感を持つ可能性もあります。
そのような事態になることを避けるためには、支給している手当が「報酬」又は「賞与」又は「報酬にも賞与にも該当しない」かの判断は重要となります。
報酬とは
基本給のほか、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当等、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。なお、年4回以上の支給される賞与についても標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。臨時に受けるもの、3か月を超える期間ごとに受けられる賞与(年3回以下支給される賞与)は報酬には含まれません。
報酬にならないもの
結婚祝金、見舞金、解雇予告手当、慶弔費、退職金、3か月を超える期間ごとに受けられる賞与(年3回以下支給される賞与)、制服・作業服など。但し、3か月を超える期間ごとに受けられる賞与(年4回以上支給される賞与)は「賞与」に該当します。
少し細かいお話にはなりますが、具体例を挙げて、ご説明させていただきます。
なお、各手当の詳細(支給基準や就業規則での規定有無など)によって判断は変わりますので、判断に迷われた際には年金事務所へご相談ください。
永年勤続手当
永年勤続手当について賃金規程に定められており、賃金台帳にも記載されているケース
(例)
勤続年数15年で特別休暇3日間と永年勤続の表彰として10万円の支給
勤続年数25年で特別休暇10日間と永年勤続の表彰として20万円の支給
(結論)
報酬にも賞与にも該当しない
(理由)
以下の3つの要件を満たしている為。
・企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するものである。支給に合わせてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
・勤続年数のみを要件として一律に支給されるものである。
・社会一般でいわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔がおおむね5年以上のものである。
この3つの要件を満たしていない場合でも、直ちに「報酬」や「賞与」と判断されるのではなく、永年勤続手当の性質が確認され、総合的に判断されることになります。
慰労金
有期契約従業員の契約更新をする場合に、1年ごとに支給される手当。実働日数により金額が変動し、手当は賃金規程に定められているケース。
(例)
80日以上 80,000円
100日以上 110,000円
↓
240日以上 420,000円
(結論)
賞与に該当
(理由)
賃金規程に定められており、労働の対償として会社が従業員に支払うものであるから。
経験者手当
一定の条件を満たした6か月以上の経験者の有期契約従業員を契約更新をする際、更新後初回の給与支給日に支給される手当。手当は賃金規程に定められていないケース。
(例)
6~11カ月 10,000円
12~23カ月 50,000円
24~35カ月 100,000円
(結論)
賞与に該当
(理由)賃金規程に定められてはいないが、従業員が会社に労務を提供する(働く)ことを前提として支払うものであるから。
カフェテリアプラン
従業員が、住宅補助・医療費補助などの福利厚生的な手当てを一定のポイントの範囲で、設定されたメニューから自由に選べる制度。賃金規程に定めはなく、社内通知で定められているケース。
(結論)
報酬に含まれる
ポイントを金額に換算して、報酬額を算出
(理由)
従業員に対して、あらかじめ定められたプラン及びポイントに基づき給付が行われたものであるから。但し、利用メニューの内容及び支給月に基づいて、個別で判断する必要はあります。
上記判断は全て、記事の投稿日時点でのものとなります。今後、取り扱いが変わる可能性もありますのでご注意ください。
社会保険手続きのアウトソーシングを検討の際は、埼玉県さいたま市のりか社労士事務所までご相談ください。