初めて従業員を雇うときに必要なこと~労災保険・雇用保険~

手続き

事業を始めて、初めて従業員を雇うことになったとき、何をしなければいけないのか?
前回の社会保険に続き、今回は労災保険・雇用保険について解説をします。

労災保険・雇用保険とは?

【労災保険】業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度。
【雇用保険】労働者が失業した場合などに必要な給付を行い、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに再就職の援助を行うことなどを目的とした雇用に関する総合的な機能をもった制度。

労災保険では仕事による怪我の治療費や、怪我のため働くことができない期間の休業補償などが給付されます。
雇用保険では、失業した際の基本手当(失業給付)や育児休業給付金などの代表的な給付があります。

労災保険と雇用保険をまとめて【労働保険】と言います。

必ず加入しなければいけないのか?

労働保険は、原則として 1人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、法人・個人に関係なく、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、 労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。1人でも従業員を雇えば、強制適用となるわけです。
強制適用の例外は、個人経営で労働者数5人未満の農林水産の事業です。

社会保険の強制適用とは異なるので、注意が必要です。

どのような手続きが必要なのか?

必要な手続き提出期限提出先添付書類
労働保険 保険関係成立届従業員の雇用後10日以内労働基準監督署会社の登記簿謄本
(個人事業主は住民票)
労働保険 概算保険料申告書従業員の雇用後50日以内労働基準監督署
労働局
日本銀行
なし
雇用保険適用事業所設置届雇用保険被保険者となる従業員を
雇用した日から10日以内
ハローワーク保険関係成立届の控え
会社の登記簿謄本
(個人事業主は住民票)
賃貸の場合は賃貸借契約書等
雇用保険被保険者資格取得届雇用保険被保険者となる従業員を
雇用した日の翌月10日まで
ハローワーク原則なし
「従業員の雇用後」とは、「初めて従業員を雇い入れた後」です。

上記の手続は、一元適用事業所のケースです。
二元適用事業所(一般的に農林漁業・建設業)であれば、労働保険成立や保険料申告の手続を労災保険・雇用保険それぞれで行う必要がありますので、一元適用事業所に比べて手続の手間が増えます。
二元適用事業所については、また別の機会に解説したいと思います。

【雇用保険被保険者の要件】
常用・パート・アルバイト・派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、原則、下記2点を満たす労働者は被保険者となります。
①週の所定労働時間が20時間以上である
②31日以上引き続き雇用されることが見込まれる

本社・本店だけで手続きすればいい?

1つの会社であっても、本社、支店、工場等に分かれていれば、それぞれで手続が必要となります。つまり、新しく店舗をオープンする、支店が増える都度に、手続が必要になります。

しかし、給与計算や総務人事関係等の手続は本社や本店でまとめて行うような場合、一定の要件を満たしている事業所は、「労働保険保険関係成立届」を届出した後、「労働保険継続事業一括申請書」や「雇用保険事業所非該当承認申請書」という手続をすることで、本社や本店にまとめることができます。

もし手続きをしなかったら、どうなるのか?

成立手続を行うよう指導を受けたにもかかわらず、成立手続を行わない事業主に対しては、行政庁の職権による成立手続及び労働保険料の認定決定が行われます。その際は、遡って労働保険料が徴収されるほか、併せて追徴金を徴収されます。

また、事業主が故意又は重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届を提出していない期間中に労働災害が生じ、労災保険給付を行った場合は、遡って労働保険料を徴収(併せて追徴金も)されるほかに、労災保険給付に要した費用の全部又は一部が徴収されることになります。

初めて従業員を雇用することになると、多くの手続きややるべきことが発生します。
手続きを会社で行うことを負担に感じるようでしたら、りか社労士事務所で代行できますのでご相談ください。