未払い賃金の請求期間が5年に!?

法改正

残業代の計算誤りがあって、未払い賃金を遡って支払う必要が出た。
従業員が労基署に駆け込んで、調査の結果、未払い賃金を支払うことになった。

このような場合、未払い賃金は何年分支払う必要があるでしょうか?

未払い賃金の請求期間が2年⇒5年に延長

未払い賃金の請求期間は2020年4月1日から5年に延長されました。
2020年4月1日以降に支払われた賃金に適用されます。
5年に延長されましたが、当分の間は3年となっています。

厚生労働省リーフレット「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」

また、賃金台帳の記録の保存期間や付加金の請求期間も延長されています。

付加金とは、裁判所が、労働者の請求により、事業主に対して未払賃金に加えて支払を命じることができるものです。
対象となるのは、解雇予告手当(労基法20条1項)・休業手当(労基法26条)・割増賃金(労基法37条)・年次有給休暇中の賃金(労基法39条9項)の4つです。

対象となる賃金

未払い賃金請求期間延長の対象となる賃金は下記の通りです。

厚生労働省リーフレット「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」

住宅手当を従業員に支給しているでしょうか?

住宅手当は残業代などの割増賃金計算における基礎となる賃金から除外する賃金として、労働基準法第37条第5項および同法施行規則第21条に定められています。
つまり、残業代計算の基礎に含めなくていいのです。
しかし、「住宅手当」であれば、何でも基礎に含めなくていい訳ではありません。
割増賃⾦の基礎から除外できる住宅⼿当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいいます。

例えば、家賃の何%といった定率方式であれば、残業代計算の基礎に含めない。
一方、賃貸住宅なら2万円、持家なら1万円というような、一律に定額で支給しているのであれば、残業代計算の基礎に含める必要があります。

一律・定額な住宅手当であるにも関わらず、残業代計算の基礎に入れていない場合、残業代の未払いが発生しています。

(例)基本給19万円、資格手当1万円、住宅手当1万円、1か月の平均所定労働時間160h
  <住宅手当を基礎に含めない>(19+1)÷160×1.25=1562.5円
  <住宅手当を基礎に含める>(19+1+1)÷160×1.25=1640.6円(小数点第2位以下切り捨て)
  毎月平均残業時間が20時間だった場合、3年間で56,232円の未払い残業代が発生していることとになります。

このような未払い残業が発生し、まとめて支払わなければならなくなると、会社にとっても大きな負担になるかと思います。

自社での給与計算に不安や負担を感じられているなら、りか社労士事務所にご相談ください。
就業規則の賃金規程と給与計算方法の整合性も一緒に確認します。