法定と所定の違い

就業規則

「法定労働時間、所定労働時間」
「法定時間外労働、所定時間外労働」
「法定休日、所定休日」

このような言葉を耳にされたことはあるでしょうか。
「法定」と「所定」。この違いを理解していないと、従業員に支払う給与で未払いが発生するかもしれません。

「法定労働時間」とは?「所定労働時間」とは?

まず、所定労働時間とは「労働者と会社との間で交わされた契約の中で定められた労働時間」のことで、会社の就業規則や雇用契約書で定めます。例えば、9:00-17:30(休憩60分)の労働契約を交わした場合、所定労働時間は7時間30分となります。

一方、法定労働時間とは、法律で定められた労働時間です。
労働基準法第32条で「原則1日8時間、週40時間まで」と労働時間の上限が定められています。
「うちは1日10時間が労働時間で、雇用契約書にもそう書いている」と言ったとしても、1日8時間を超えた2時間は無効となり、残業代(割増賃金)の支払をしなければいけません。

なお、法定労働時間を超えて労働させる場合には、36協定の届出もしなければいけません。
36協定については、こちらをご参照ください。

法定労働時間を超えた労働には割増賃金の支払

法定労働時間を超えた労働をさせた場合、残業代(割増賃金)の支払が必要になります。
法定時間外労働の割増率は25%です。
例えば、時給1,000円の従業員に法定時間外労働を1時間させた場合、その1時間の労働には1,250円を支払います。

また、大企業であれば月60時間を超える法定時間外労働の割増率は50%となります。
これは、2023年4月1日から中小企業にも適用されますので、長時間労働が常態化している会社はご注意ください。

東京労働局「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」

所定労働時間を超えた労働への支払

1日の所定労働時間が8時間未満の会社では、所定労働時間を超え、法定労働時間以内の労働に対して賃金の支払ができているでしょうか。

例えば、9:00-17:00(休憩60分)、所定労働時間7時間。
17:00-18:00に働いた場合は、1時間の所定時間外労働(法定内残業とも言います)に対して賃金の支払が必要です。
時給制の従業員であれば、1時間の法定内残業代の支払いが漏れる可能性は低いですが、月給制の従業員ではこの法定内残業代の支払いが漏れていることがあります。
1日8時間未満の所定労働時間の会社であれば、法定内残業代が未払いとなっていないか1度ご確認ください。

ちなみに、法定内残業には基本的に割増賃金を支払う必要がありません。
時給1,000円の方であれば、1時間の法定内残業には1,000円を支払います。

月給制で基本給250,000円(その他手当なし、1ヵ月の所定労働時間160時間)であれば、
250,000円÷160=1,562.5円。50銭以上1円未満の端数を切り上げて、1時間あたりの賃金は1,563円。
1時間の法定内残業には、1,563円を支払います。

もし、就業規則や雇用契約書で「所定労働時間を超えた労働には割増賃金を支払う」というような文言があれば、割増賃金(割増率25%以上)の支払いが必要となります。

休日にも「法定」と「所定」がある

休日にも「法定休日」と「所定休日」があります。
労働基準法第35条では「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」と定めています。

例えば、「休日は土曜日・日曜日」の会社では、土曜日もしくは日曜日のどちらかが法定休日となり、もう一方は所定休日となります。
日曜日を法定休日と就業規則で定めていれば、日曜日に労働させるには36協定(時間外・休日労働に関する協定)」を労使で協定し、労働基準監督署に届出しなければいけません。
また、日曜日の労働に対し、休日手当として割増率35%以上の賃金を支払います。
所定休日の土曜日に労働させたとしても、割増率35%以上の休日手当を支払う必要はありません。
ただし、1日8時間・週40時間を超えて労働させた場合は割増賃金の支払いが必要になります。

御社の就業規則はどうなっているでしょうか。
「法定休日は何曜日?」
「所定労働時間が7時間だけど、法定内残業分の賃金はどのように計算することになっているか?」
「所定休日も法定休日もどちらも割増率35%で割増賃金を支払うことになっている?」
会社で定めたルール(就業規則)通りの運用ができているでしょうか。

就業規則の見直しや給与計算が正しく行われているかのチェックはりか社労士事務所で対応可能です。
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