固定残業代を従業員に払っている会社は、その運用や考え方が間違っていないでしょうか。
裁判で固定残業代の有効性を争い、その有効性が認められなかったという裁判例も多くあります。
固定残業代として有効だと認められるかどうかのポイントを確認しましょう。
そもそも固定残業代とは?
残業をしてもしなくても支払うと約束している残業代
これが固定残業代です。
みなし残業代、固定残業手当など名称は会社によって様々です。
例えば、基本給200,000円、1か月の平均所定労働時間160時間のケースで月30時間分の固定残業代を支給するとします。
200,000円÷160時間×1.25倍×30時間=46,875円
つまり、固定残業代は46,875円となります。
残業を全くしなくても、固定残業代46,875円は支給することになります。
「まれに固定残業代を支給しているから、どれだけ残業しても時間外手当(追加の残業代)を支給する必要はない」
と誤った認識をしている場合があります。
固定残業代は一定時間数の残業代ですから、その時間数を超えて残業をさせたら、
超えた時間分の時間外手当(追加の残業代)を支給しなければなりません。
雇用契約書(労働条件通知書)や就業規則に明記しているか
残業代が固定残業代として定額で支払われるということについて、雇用契約書に明記し、就業規則(賃金規程)に定めているでしょうか。
これが出来ていなければ、固定残業代として認められない可能性が非常に高いです。
金額や含まれる時間数を明示しているか
基本給25万円には残業代を含む
これだけでは、基本給の内、いくらが残業代なのか、何時間分の残業代なのかが分かりません。
固定残業代として支給するのであれば
基本給20万円 固定残業代5万円(時間外労働の有無にかかわらず、30時間分の時間外手当として支給) 30時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
上記のように雇用契約書(労働条件通知書)で明示すべきでしょう。
厚生労働省リーフレット「固定残業代 を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」もご参照ください。
固定残業代に含まれる時間数があまりにも長時間なものとなっていないか
従業員に時間外労働をさせるためには「36協定」を締結し、労働基準監督署へ届出しなければいけません。
「36協定」の1か月あたりの残業時間(時間外労働)の上限は45時間となっています(労働基準法第36条第4項)。
この45時間を超える残業を前提とするような固定残業代は、無効とされる可能性があります。
固定残業代を導入するメリット
- 人件費の見込みを立てやすい
- 給与計算の労力が軽減される(固定残業代に含まれる時間数を超えた残業が発生しない場合)
- 残業時間抑制につながる(一定時間数までは残業をしてもしなくても、支給される賃金は変わらないため)
- 求人で総支給額を大きく見せられる
支給額:200,000円(基本給200,000円)残業あり、月30時間程度
支給額:250,000円(基本給200,000円、固定残業代50,000円※時間外労働30時間分)
固定残業代を導入するメリットはもちろんありますが、「固定残業代を払っておけば、何時間でも残業させられる」という会社が得するようなものではありません。
正しい運用をしていないと、従業員から訴訟を起こされて、多額の未払い残業代を支払うことになるリスクもあります。
すでに導入をしている会社は、まずは制度のチェック・見直しをしましょう。
導入を検討している会社は、専門家である社会保険労務士に相談することをおすすめします。
固定残業代制度に関するご相談はりか社労士事務所まで。