最低賃金が過去最高の上げ幅

その他

現在の最低賃金は東京都1,041円、大阪府992円、埼玉県956円です。
2022年8月1日に中央最低賃金審議会の小委員会で引き上げ額の目安が決定されました。
その引き上げ額は過去最高の31円(地域によっては30円)。
決定した目安通りに最低賃金が改定されれば、2022年10月より東京都1,072円、大阪府1,023円、埼玉県は987円となります。

そもそも最低賃金とは?

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。

厚生労働省ホームページ「最低賃金制度とは」

「労働者と使用者で合意していれば、最低賃金を下回っていても大丈夫」というものではありません。
最低賃金よりも低額な賃金を定めていた場合、それは無効となり、最低賃金と同額の定めとみなされます。
つまり、「少なくとも最低賃金額の支払いをしなければならない」ということです。

ちなみに、冒頭で「現在の最低賃金は埼玉県956円」と書きましたが、この最低賃金は地域別最低賃金です。各都道府県で定められたものです。

地域別最低賃金とは別に、特定(産業別)最低賃金というものがあります。これは、関係者の申出に基づいて、地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた産業について設定されています。

最低賃金の対象となるもの・対象外となるもの

最低賃金を下回っているか上回っているかを確認するためには、最低賃金の対象となる賃金と対象外となる賃金を理解しておく必要があります。

厚生労働省ホームページ「最低賃金の対象となる賃金」

最低賃金の対象となる賃金は、図のピンク色の賃金です。

また、下記の賃金は最低賃金の対象外となります。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

対象外の賃金を除いて、最低賃金を下回っていないか確認をしましょう。
時給制の場合はチェックが簡単ですが、日給制や月給制の場合は正しい計算方法でチェックをしなければ、「上回っていると思っていたのに、実際は下回っていた」という事になりかねません。

では、チェックするための計算方法を見ていきましょう。

最低賃金額を下回っていないかチェック<日給制の場合>

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

1日の所定労働時間は、労働者が1日で働くべき時間です。就業規則や雇用契約書で定めている、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた時間です。

(例)1日の所定労働時間が8時間、日給8,000円の場合
8,000円÷8時間=1,000円

東京都では最低賃金を下回っていますが、埼玉県では上回っていることになります。

最低賃金額を下回っていないかチェック<月給制の場合>

月給÷1か月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

月給制では、基本給とは別に職務手当や時間外手当など各種手当がついていることが一般的です。各労働者によって、ついている手当も違うでしょう。計算する際には、対象外となる手当を除くことがポイントとなります。

また、1か月の平均所定労働時間は、年間の所定労働日数に1日の所定労働時間を乗じて12で割ることで求められます。

(例)年間所定労働日数255日、1日の所定労働時間8時間、基本給140,000円、職務手当30,000円、通勤手当5,000円の場合
1か月の平均所定労働時間:255×8÷12=170時間
(140,000円+30,000円)÷170時間=1,000円

通勤手当は対象外の賃金になるので、除いて計算をします。
計算の結果、東京都では最低賃金を下回っていますが、埼玉県では上回っていることになります。

この他にも、日給制と月給制の組み合わせで給与が支給される場合や、歩合給の場合など、最低賃金の計算方法はそれぞれ異なります。
過去最高の上げ幅になる可能性が高い2022年10月に向けて、昇給が必要になりそうな労働者を早めに確認して準備をしておくことをおすすめします。

最低賃金や昇給に関するご相談はりか社労士事務所までどうぞ。